TOPページ>>フランスの地方・豊かなる大地へ>>ブルターニュ探訪


■ブルターニュ探訪

  日本とは大きく異なる, 石の文化、多民族多宗教、習慣、歴史、気候、地形が混じり合い、地方毎に特色のあるすばらしい芸術の宝庫のフランス。
  その中で今回はブルターニュのロマネスクの僧院を探訪しました。
  今回の旅のテーマはケルト文化の残る僧院を尋ねるので、普通行かないところをご紹介します。


ブルターニュのカルヴェール

  先ずケルト(フランス語ではセルト)について簡単にお話ししましょう。
  ケルト民族は色々言われますが、インドゲルマン語に属し、気候の変動で各地に広がり、いろいろな民族と混じり合って変化移住します。ローマ侵略以前 にすでにブルターニュ半島に住んでいたと言われます。
  5世紀にイギリスにいたケルト人がアングロサクソンにおわれ、又フランスに再上陸します。それがイギリス のグレート(大)ブリテンに対する(小)ブリテンがブルターニュの名の由来です。多神教の伝統と一神教のキリスト教が交差、合体しながら文化は音楽、踊り、歌、衣装、 遊び、伝説を通じ口から口へと伝えられます。
  ブルターニュにケルトの文化が残っているのは、フランスの内陸部とを隔てる様に、森が広がっていた為といわれます。又、海の入り江を 利用しての公益と文化交流があった為、ブルターニュ独自のケルト文化が生まれました。


ダウラス修道院の回廊


ダウラス修道院の礼拝堂

  このブルターニュにおけるケルト文化は日常生活に浸透していますが、渦巻き文様、組紐文様、動物文様、植物の図 像、等の抽象的な形態がシンボルとされ、キリスト教にとけ込んでいる様を見る事が出来ます。
  前夜ブレストで海の幸に大満足の一行は朝寒い中を教会が開くのを待つ間、墓地の入口に残る教会参事会のポーチのケルサントンと言う硬い特殊な砂岩で 彫刻された重々しい12使徒を見学しました。ここはダウラス修道院。ブレスト湾の入り江、ブルターニュに於いて唯一美しい12世紀のロマネスクの回廊が あります。2本並んだ苔むした柱の全ての柱頭に多種な植物、歯形、ゼンマイ文様が確かな技でエレガントに残っています。特に中央の水盤は8角形でそれぞれの面に口を開けたマスクが興味深く、此処にはキリスト教のお話の彫刻は見当たらない。 広い庭は当時の修道院の重要さがうかがえ、奥に懐かしい 祠(ほこら)の様な木造の礼拝堂が、ひっそりと建ちながら、暖かく心癒される場所になっています。


サンクロワ教会の柱頭


ロックトウデイ教会の柱頭


ロックトウデイ教会の柱頭

  次にビグデン地方のロマネスクが完全に良く保存されているロックトゥディ教会。此の地方は木が少ないがエニシダや青い大きな紫陽花は灰色の石に鮮やかで元気です。外観はシンプルな構造と均整の取れた形、美しい素材の石を念入りに切っています。
  ブルターニュ独特の教会様式”聖堂囲い地”はキリスト教徒でなくても、本当に聖域に入った様な気持ちになります。此の聖堂囲い地というのはブルターニュ独特で、これはケルトの影響で多神教の伝統から沢山の聖人を祭り教会正面に守護聖人 の象が有ります。ブルターニュ西部に多いのですが、石で囲われた中には門、教会堂、納骨堂、墓地、カルベールと呼ばれるキリストの一生や福音書の物 語を石で表現した彫刻が有ります。教会内部は側廊から光が入り、均整の取れた美しいプロポーションと平和を感じる荘厳な空間が広がっています。礼拝 堂の廻りの柱頭とこれが特徴的な土台に文様が多く見られます。ゼンマイ(春を巻き戻すという意味が有るらしいが、此の地にいると春の喜びが分かる気がする)、 渦巻きが2段3段と空間を良く構成していて、固い石にどっしりと十字が刻まれ、間に有るキリスト像は愛嬌があリ、微笑ましいです。


ロックロナンの小路


カンペール

  途中ロクロナンは是非お勧めの街で、いつか違うテーマの時にご案内致しましょう。アイルランドから来た聖人ロナンの村、時が止まった様な石の佇まい の村に中心に美味しいお菓子屋さん、クレープ屋さんが有ります。
  フエナン(11s天井が木の為ほっとする)、カンペールを通り、ポンタヴェン(hp芸術 家のゆかりの地を訪れる…参照下さい)では ゴーギャンの絵の黄色のキリストのモデルになった17世紀のキリスト像の有る礼拝堂を見学し、最後にキャンペルレのサントクロア教会をご案内しま す。此の教会は神殿の様な円形教会で十字型の教会になれている者には新鮮ですが、イスラエルのキリストの墓を思い起こすスタイルになっています。特 に地下礼拝堂は11m2x7m8の広さで、上部の教会の祭壇を支えている。6本の柱の柱頭の、彫刻は植物の葉、渦巻文様で高い技術精密さはすばらしく、此の彫刻に命を掛けている石職人 の心が伝わってくる様です。
  ブルターニュはバターお塩が名産だけ有って美味しい物が沢山有ります。発見が多いのは何処のクレープ屋さんでも焼き方やバターの風味の出し方で、異 なりそれぞれの美味しさが有ります。ガレットはそば粉のクレープでハム、卵チーズ等を挟むメインディッシュ。そうそう、パリでは余りお目に掛からな い、ブルターニュ独特のガレットはホタテ貝入りや手長エビ等がのった海の幸入りです。小麦のクレープはデザート用でジャム、蜂蜜、バナナ、チョコ、 そして忘れてならないのがリンゴ入りと塩キャラメルソース入りでしょうか。


クレープ(ガレット)

  菓子は多種あって、クッキー類はガトーブルトンという厚めの物、ガレットクッキー、クッキーを薄く焼いて何層にもくるんだレースのクレープと云う名 のクレープダンテルが有ります。 他に塩キャラメルや日本でも有名に成ったクインアマン、プラムの入ったファーブルトンが有ります。
  是非お出掛け下さい。 8月にはケルト祭りが有り、ブルターニュの民族衣装の音楽踊りが楽しめます。


川井 世津子
>>プロフィール


この記事は日本人会新聞の連載「旅三昧・奥深いフランスFRANCE PROFONDE」に記載されたものを追加変更しました。日本人会のホームページ: http://www.nihonjinkai.fr




本サイトはフランス日本語ガイド通訳協会(AGIJ)の公式サイトです。
紹介頂く分にはリンクフリーですが、個々の記事、写真等の無断転載はお断りします。