実は、ここにサン・ジャック(聖者ヤコブ・ホタテ貝が象徴)を祀る聖堂があり、聖堂は中世時代最大のイヴェントであったサン・チャゴ(スペイン)巡礼の巡礼者たちの集合・出発点になっていました。これがサン・ジャックの塔の一番価値ある歴史的ポイントです。塔そのものは16世紀初頭のもので教会の南側に建てられましたが、中世後期のゴシック・フランボワイヨン(爛熟ゴシック・火焔型装飾)スタイルで建てられています。しかし、聖堂の本体そのものは全て消えてしまいました。中世時代最大のイヴェント、サン・チャゴ巡礼を象徴していたからでしょうか、王(近世)のみならず神(中世)をも否定したフランス大革命の時に破壊されてしまったのです。そして財政難打開の為、壊された聖堂の石は販売されてしまいます。かろうじて塔だけはある建築家の機転で救われました。建築家にとって塔そのものに建築的価値を見出したからでしょうし、またここで17世紀、天才パスカルが塔に登って気圧の研究をしたからかも知れません。したがって19世紀にはしばらく天候観測所としてサン・ジャックの塔は使用されます。そして記念に天候観測の神様パスカルの像が置かれました(写真2)。へクトパスカルとして日本でも天気予報で良く使われていますおなじみの言葉は計算機の元祖でもありますブレーズ・パスカルに由来します。 |