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■ミシュラン・ガイド 2013年

 
 ミシュラン・ガイド 2013年フランス版が例年のように3月1日に発売されました。
 
 総数596箇所の星付きレストランの内、3つ星は27軒 (新規1軒)、2星は82軒(新規5軒)、1つ星は487軒(新規39軒)です。

 今年の特徴は、地方に1つ星から2つ星に昇格したレストラ ンが多く出現し、その土地の特産物を利用したフランス伝統料理を作るシェフたちの仕事ぶりが報われたことです。
 また、ここ数年、日本人の活躍が目覚ましく、日本人シェフ の星付きレストランの数がフランス全国で17軒にもなって いる事が話題になっています。  
 2013年の料理界のビッグ・ニュースは、ムーリス・ホテルのヤニック・アレノが、1月末で退職し、クールシュヴァルのシュヴァル・ブランに移ったことです。彼はムーリス・ホテルのレストランを3星にした功労者です。当然このホテルは彼がいなくなった後は星を落とすのではないかと思われていたのですが、来年はわかりませんが、今のところは3星を維持しています。
 新たに3星に輝いたのは1軒だけで、<ミシュラン2013年>一番の話題の人物は、サントロペのホテルRésidence de la Pinède内<ラ・ヴァグ・ドール>La Vague d'Or のシェフ、アルノ・ドンケル(Arnaud Donckele)です。ノルマンディー地方、ルーアン出身の若干35歳です。
 
 彼は、パリの老舗グマール・プルニエから始まり、ウジェニ・レ・バンの3星ミッシェル・ゲラールの元で修行し、その後アラン・デュカスのモナコの3星店ルイ・キャーンズ、及びパリの3星プラザ・アテネ、そしてラセールで働くというように、星付きレストランを渡り歩き、料理人としては理想的な履歴で、2005年からここのシェフです。近郊の土地の薬草を使い、地中海で穫れる、今まで食したことのないような魚がテーブルに出てくるそうで、チャレンジ精神旺盛な有能なシェフです。
 
 新たに1つ星から2つ星に昇格した店は5軒だけで、それもすべて地方のレストランです。アヌシー湖畔のヴェリエ・デュ・ラックのいつも黒い帽子をかぶって登場するマルク・ヴェラの店を継いだヨアン・コント(Yoann Conte)も1から2つ星になりました。入口には<Yoann Conte, élève de Marc Veyrat>(マルク・ヴェラの弟子ヨアン・コント)と書いてあります。  

 クールシュヴァルの<ラ・ターブル・デュ・キリマンジャロ>も2つ星です。シェフは、サンドラン、ホテル・ジョルジュ・サンク、ピエール・ガニエール、ムーリス・ホテルなどで修行した、こちらも素晴らしい経歴の持ち主ニコラ・サル(Nicolas Sale)です。  

 ディジョンの老舗宿、ル・シャポー・ルージュも1つ星から2つ星に昇格です。 シェフは、オーナー・シェフのウイリアム・フラショ(William Frachot)です。彼は世界中を旅して各国の料理を学び、ブルゴーニュの故郷に戻ってきた有望なシェフです。  

 ブルターニュ地方のレンヌ郊外、Noyal-sur-Vilaine のオーベルジュ・デュ・ポン・ダシニェ(Auberge du Pont d'Acigné)のシェフ、シルヴァン・ギィユモ(Sylvain Guillemot)も1つ星から2つ星になりました。ここは値段の安さで前から気になっていた店です。ヴィレヌ川の畔にある大変美しいレストランで、プレ・サレの子羊、ブルターニュ地方のオマール海老の”マキ”などがメニューにあり、地方色豊かな、そして値段も都会の星付きレストランのようには高くなく、モン・サン・ミッシェルの帰りに是非遠回りしても行っていただきたいお薦めのレストランです。
 
  
 
 今年2つ星になった最後にご紹介する店は、ヴァンデ地方のノワルムチエの<ラ・マリヌ>La Marineです。シェフは、アレクサンドル・クイヨン(Alexandre Couillon)で、彼のセカンド店が、ビブ・グルマンで紹介されている<ラ・ターブル・デリーズ>La Table d'Eliseです。
 
 このビブ・グルマンが載っている<Bonnes PetitesTables 2013>というミシュランの別小冊子フランス版がすでに2月16日に発売になっています。
今年は新しく98軒の店がこのマークを獲得し、マークを失ってしまった所もありますが、2013年は31ユーロ以下のメニューの載っているお買い得感のある<ビブ・グルマン>マークを取得したレストランが632軒になりした。


* ビブbibとは、タイヤをイメージして作られたミシュラン社のキャラクター<ムッシュ ー・ビバンダム>のことです。


<ビブ・グルマン>
マーク
 
 新たに1つ星に輝いたレストランで最初にご紹介するのは、ブルターニュ地方の漁師の町、カンカルの<ラ・ターブル・ドゥ・ブレッツ・カフェ>La Table de Breizh Caféです。シェフは、日本人、クダカフミオさんです。
この店は、モン・サン・ミッシェルから40km程のところにあり、オーナーは、日本にも有名なクレープ店をもっている日本びいきの人です。ブレッツというのはブルトン語で、ブルターニュを意味します。ここでは日本料理とフランス料理の絶妙なフージョン(融合)が味わえそうで、モン・サン・ミッシェルから海沿いの風光明媚な田舎道を通り約1時間、遠回りしても寄ってみたくなるレストランです。
パリのマレ地区にも最近このブレッツ・カフェの支店がオープンしています。
 
 フォンテンブローの<ラクセル・フォンテンブロー>L'Axel Fontainbleauのオーナオー・シェフの後藤邦久さんも1つ星を獲得しました。  

 またパリでは7軒も新たに1つ星に輝いたレストランが出現です。

 ヴァランスにある伝説3つ星レストラン<ピック>のシェフ、女性料理人の第一人者の アンヌ・ソフィー・ピック(Anne-Sophie Pic)が昨年パリにオープンしたばかりの <ラ・ダム・ドゥ・ピック> La Dame de Pic(スペードの女王)というしゃれた名前の店が前評判の通り1つ星を獲得しました。
 
  
 
 サン・ルイ島の<ル・セルジャン・ルクリュト ゥール>Le Sergent Recruteurのシェフ、アントナン・ボネ(Antonin Bonnet)は食材の新鮮さを大変大事にする人のようで、ロワール魚の”イケジメ”という言葉が出てくる店です。 Jaime Hayonの内装も一見の価値がある1つ星レストランです。(写真左)
 
 
 ノートノートル・ダム大聖堂の近くの5区にある<イティネレール>Itinéraireも1つ星になりました。(写真右)  
 <114 フォーブルグ>114 Faubourg(ブリストル・ホテル内)、ホテル・ジョルジュ・サンク前の<ランスタン・ドール> L'Instant d'Orもそれぞれ1つ星を獲得です。
 L'Instant d'Orは、”黄金の三角地帯”と言われるシャンゼリゼに近く、ホテル・ジョルジュ・サンクの斜め前という理想的な場所にあり、内装も素晴らしく、その割には昼のランチメニューが36ユーロと安くお値打ち感のあるレストランです。シェフは、マルセイユの3星Le Petit Nice de Passedat にいたフレデリック・デュカ、またパティシエのシェフは、ここでも日本人が活躍していて、中村樹里子さんです。  

 ロワイヤル・モンソー・ホテル内の2つのレストランも今年1つ星に輝きました。 その一つが、イタリアンのIl Carpaccioで美味です。
 
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 数年前にフィリップ・スタルクの内装で生まれ変わったロワイヤル・モンソー・ホテル は、日本大使館にも凱旋門にも近く、お茶タイムに寄りたくなるいい雰囲気のホテルです。  

 リッツ・ホテル内の<レスパドン>、及びクリヨン・ホテル内の<アンバサドール>は、 工事の為しばらく閉店ということもあり、共に星を落としています。  

 2010年にフランス料理が、ユネスコ無形文化世界遺産に登録され、その後、Mission française de patrimoine et des cultures alimentaires(フランスの遺産及び食文化委員会)というのができました。その会合で、フランスの一都市を選んでその町を<フランスの食文化の首都>に指定することになリました。
その為に行った今年1月末の世論調査の結果、リヨンの町が、ディジョン、パリ・ランジス、トゥール等の候補地のなかで圧倒的な支持を受け、ここのロテル・デューl'Hôtel Dieuがフランス食文化のミュゼになるのではないかと言われています。  

 パリのスイート好きの間で今話題になっているのは、この2月にオープンしたばかりのアラン・デュカスのチョコレート屋さんです。 その名も<アラン・デュカス・チョコレート工場>La Manufacture du Chocolat Alain Ducasseで、バスティーユの近くです。彼はその昔ル・ノートルの所でお菓子の修行をした事があるのだそうで、若いときからの夢が実現したようです。  

 料理界では、昨今<キュジーヌ・フランコ・ジャポネーズ>と言われる、日本の食材などをフレンチに活用する店が増え、メニューに、”マキ、ユズ、マッチャ、ミソ、ワギュウ、タタキ”などの日本語がよく登場しています。
料理界の大御所アラン・デュカスが、”日本人の舌を満足させれば、世界中どこでも勝負できる"と語ったことがありますが、日本料理で育った日本人シェフの料理に対する情熱、真摯さ、繊細さは他に類を見ません。
フランス語ができなくとも目的に向かって頑張っている世界中の料理人の姿に感動です。
 


文責 松下 光子
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