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■ミシュラン・ガイド 2012年

 
 ミシュラン・ルージュ2012年フランス版が2月27日に初めに発表され、出版は例年のように3月初めです。
 
 総数594箇所の星付きレストランの内、3星は26軒(新規は1軒)、2星は83軒(新規10軒)、1星は485軒(新規58軒)です。

 去年は、それまで毎年新たに現われていた3星レストランが一軒も誕生せず、不景気を反映してか、お値打ち感のあるビブ・グルマン(Bib Gourmand)がたくさん出現しました。

 去年はビブ・グルマンの店が600軒ありましたが、今年はその数がまた増え、何と630軒にも上りました。124店が新規、94軒は昨年保持していたビブ・グルマン・マークを失ってしまいました。
 ミッシュランの係員は、どうも、星を付けたり落としたりするよりも、影響力の少ない、この安くて(メニュー35€以下)気軽に行けるビブ・グルマンの格付けの方を気楽に行っているような気がします。
 
 今年の話題は、何と言っても新たに3星に輝いたサヴォア地方メジェーヴのルレ・シャトー<Flocon de Sel>のオーナー・シェフのエマニュエル・ルノ(Emmanuel Renaut) です。彼は現在44歳、一見ラグビー選手のような風貌です。
パリのクリヨン・ホテルでクリスチャン・コンスタンの時代に、今人気のシェフ、エリック・フレションと共に働き、その後アヌシー湖の畔でマルク・ヴェイラのセカンド・シェフを7年間勤めた人です。 彼の友人は、“彼の料理は、まるで山の物語の語り手のようだ”と言っています。


 
 新たに2星を獲得したところで話題になっているのは、昨年オープンしたばかりのマンダリン・オリエンタル・ホテル内のレストラン<Sur Mesure>に引き抜かれたティエリ・マルクス(Thierry Marx)と、一昨年オープンしたこれ又中国系のシャングリラ・ホテル内<l'Abeille>のシェフ、フィリップ・ラベ(Philippe Labbé)です。
 
 余談ですが、マルクスは日本製包丁の大コレクショナーです。最近テレビに出てくるフランス人のシェフ達は、日本の包丁を使う人が多くなっているような気がします。大事なものを扱うようにおもむろに桐の箱から和包丁を取り出したりして、、。

 日本の板前さんは自分の包丁をどこにでも大事に持って店を渡り歩くそうです。フレンチのシェフ達も、何かそこに職人魂を感じ、共有する思いを抱いているのではないでしょうか。

 ランスの<Le Park des Crayères >で2009年からシェフをつとめているフィリップ・ミルが2星を獲得しました。彼は2011年に、最優秀職人賞<meilleur ouvrier de France >を受賞し、ムーリス・ホテルのシェフ、ヤニック・アレノの有能なセカンド・シェフでもありました。
今年3星を獲得したエマヌエル・ルノも2004年に最優秀職人賞MOFを受賞していますし、ミシュランは、どうもこの頃料理界のMOF保持者に注目しているようです。
 
 ル・アーブルのシェフ、タルタランの店<Jean-Luc Tartarin>、そしてニースのネグレスコ・ホテル内レストラン<Chantecler>も2星になりました。
 2ヵ所、2つ星を落として1つ星になった所があります。プルセル兄弟のモンペリエにある<Jardin des Sens>と、サンスのレストラン<La Madelène>です。
 新たに1星を獲得して注目されているパリの店は、1年前にオープンしたばかりの日本人シェフ、小林圭さんの店、その名も<KEI>です。
彼はプラザ・アテネ・ホテルのアラン・デュカスの元で7年間勤め、ジェラール・ベッソンの引退後、その場所で<KEI>をオープンさせた大変才能のある料理人です。
 
 今年は、テレビによく出てくるシリル・リニャクCyril Lignacの<Le Quinzième>も1星をになりました。
彼はテレビの人気番組<Top Chef>にも出演していて、ティエリ・マルクスと共に料理界のスターです。
又彼の店では、時々、子供たち向けの料理教室も主催しているようです。
  昨年新たに星を得たレストランは、若いシェフたちが、あまりお金をかけずに開店した気軽に入れる店が多かったようです。
そんななかに、日本人の若いシェフ達もたくさんいます。

 今年は、フランスでオープンした3人の日本人シェフの店が、一挙にそれぞれ1つ星を獲得しました。彼らは皆30代の若者達です。
その一人は上記の小林圭さん、もう一人はパリ5区のレストラン<SOLA>の吉武広樹さん、そして、中部フランスの小さなサン・ヴァランタン村のレストラン<Au 14 Février>のシェフ、浜野雅文さんです(同名でリオンに移転しています)。
この店の名は、村の名にちなんで聖バレンタインデーの2月14日です。

 2月14日のバレンタインデーは、日本では女性が男性にチョコレートを贈る日ですが、フランスでは、ロウソクを灯し、目と目を見つめ合ってロマンチック・ディナーを、、、というカップルが多く、レストランは、予約でいっぱいになるたいへん忙しい日です。

 ミッシュランの星をもらうことによって客の入りが30%位違うと言われます。
今年も料理界にとっては、喜怒哀楽の3月が始まりました。
 


松下 光子
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