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■ルーブル・知られざる絵画
<聖女マグダラのマリア> マセイス Metsys 1466-1530




  <聖女マグダラのマリア>はフランス不動産金庫とフランス文化財基金のメセナにより2006年にルーブル美術館の所有になりました。
  マグダラのマリアの伝統的なイメージは香油の入った壷を持つことですが、そのふたを開けることは凡俗の世界をから脱することを意味します。香油の壷といいますと、シモン家で食事しているイエスの足をマグダラのマリアが香油で洗う行為を思い出させますが、香油壷を開ける行為は(娼婦といわれた)マグダラのマリアの改宗を象徴します。彼女は華やかに着飾っていますが、魂の動きが動作の停止や内的な瞑想によるうつろな眼差しでわかります。右手端に小さなマグダラのマリアがいて金髪に身をつつみ、天に手を挙げてひざまずいています。これは悔悛のためにやがては難行苦行をするマグダラを現しています。また、壷に描かれているのはユダヤ人の風習である割礼の場面ですが、これはキリスト教世界の洗礼に値します。この場面にこそまさにマグダラの改宗を表す深い意味があるのです。
  マセイスはここで15世紀末のフランダース肖像画の伝統に頼り、窓の飾りである風景をバックにしてマグダラのマリアを二つの円柱ではさみ、手すりの後ろに控えさせています。腰の動きや頭を下げているマグダラは、確かにエレガントなマグダラですが、同時に、マセイスにとって、省察の後の決意までを表すマグダラのマリアなのです。
(注;この絵はマセイスの傑作である<両替商とその妻>のとなりに展示されるようになりました。)


(協会翻訳部)



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