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■コンテスト! モン・サン・ミッシェル人気料理!!(2)

 第2位;巨大オムレツ(Omelette Mont St-Michel)
 

写真1
 
 フランス中世時代を最も純度の高い形で私達に紹介しているモン・サン・ミッシェルにはまたいろんな世俗的エピソードがあります。その中で最も面白いのはマダム・プラー(Madame POULARD)の物語です。プラー夫人の本名はアネット・ブチオと言い、1851年にブルゴーニュ地方で生まれています。身分制(僧侶・貴族・平民)を廃止したフランス大革命(1789)の勃発からモンサンミシェルは不幸な時代を向かえます。神の存在が否定されモン・サン・ミッシェルは牢獄になってしまうのです。ノルマンデーの僧侶たちが僧院に閉鎖されると言う天変地異が起こります。この歴史的大地震が静まり牢獄が再び巡礼の島となるまで60数年を要します。変わり果てた修道院は修復しなければなりません。この大修復を担当した建築家、その女中さんがアネットだったのです。アネットは地元でプラー氏と知り合い結婚し、巡礼者たちが60数年ぶりに押し寄せるモン・サン・ミッシェルで宿屋を経営することになります。料理には当然自信があり彼女は色んなレシピを考えますが、なかでも話題を呼んだのが巨大なオムレツです(写真1)。その巨大さは巡礼者たちを驚嘆させ、噂を呼び噂は更に客を引き付けて行きます。このようにしてマダム・プラーは有名になりモン・サン・ミッシェルをも同時に有名にさせて行くのです。多くのレシピを創作したマダムはやがて料理に貢献した夫人に与えるMERE(母)と言う称号を貰います。
 

写真2
 
 巨大なオムレツのレシピは未だ秘密にしていますが本店の壁に飾られている巨大なフライパンとボールからおおよそ見当がつきます。レストランのデモンストレーションをガラスのドア越しに観てますと、(1)先ず大きなボールに卵を割り少々かき混ぜ、(2)あらかじめ溶かしている熱い塩バターを一気に流し込み、(3)素早くそして丹念にホイップ、(4)泡立ってきたら、あらかじめバターで熱したフライパンに流し込み、(5)超乾燥して煙の出ない樫とノルマンデー名物・リンゴの木の薪を使ってかまどで焼き、(6)頃合いを見て取り出し、(7)テーブルの上で2つ折りにします。
 この様にして巨大なふわふわオムレツは出来上がって行きます(写真2)。意外な料理で名前を残したメール・プラー。その名を付けたお店は世界に知られ、今や巨大な会社に発展しています。80歳の生涯を全うしたマダムは島の教会墓地に永眠しています。。


 第1位;子羊料理(Agneau)
 

写真3
 
 モン・サン・ミッシェルにお尻を向けて夢中に草はむ羊の群れを見ると日本人ならば思わず<カワイイー!>と叫ぶことでしょうが、食いしん坊のフランス人はきっと<ウマソーダ!>と思うかもしれません。
 モン・サン・ミッシェルが日本人を引きつけて離さない原因の一つに、日本では絶対に見られない無数の羊たちの草はむ風景があります(写真3)。農耕民族である日本人にとって羊は全く別な世界の動物です。羊の群れは私達を異国の世界に誘ってくれます。一方、放牧民族にとって羊は生活の糧でした。放牧民族の血が流れるユダヤ人達は古代から感謝の意を示し加護を求めて無垢な子羊を神に捧げてきました。ところがユダヤ人の血が流れるイエス・キリストはユダヤ民族古来の律法から離れて、別次元の新しい世界観を開示しました。そのことが災いし鞭打たれ十字架にて処刑されます。したがって、キリスト教世界ではイエスを犠牲の子羊としてよく表現して来ました。
 キリスト教世界を最も純度の高い形で表わしているモン・サン・ミッシェルはヨーロッパ中世時代一千年のエッセンスと言っても過言ではありません。修道院の要に当たる回廊庭園には復活の子羊の浮彫があります。回廊を思索しながら散策し探してみてください。
 そこで、子羊料理はヨーロッパ人にとって最も高貴な料理と言うことになり、家庭内のお祝い事、社会的式典、特に宗教祭日に食します。遠い日本からモン・サン・ミッシェルを訪れるツーリスト達に先ず味わってほしいトップワン料理は勿論、キリスト教的な料理、日本人が日頃味わうことのない料理、つまり子羊の料理と言うことになります。
 子羊料理には必ず小粒インゲン豆(flageolet)が添えられます。flageolet(フラジョレ)がflageller(フラジェレー・鞭打ちの刑にする)を想起させるからだと思います。島内のレストランではインゲン豆のほかにポテトフライやラタツイユを添えるところもあり、とても美味しくいただけます。子羊料理にはやはり赤ワインが似合いますが、素朴な陶器ボールに入った地元の銘酒シードル(リンゴ酒)も悪くありません(写真4)。
 

写真4
 
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協会HP文化部



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