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■ワインの都ボルドーの新・風景

 今回は、フランス南西部アキテーヌ地方の中心都市、世界的ワインの生産地として知られる、我が街ボルドーをご紹介いたします。

 ボルドー市内中心部に広がる歴史保存地区は、フランス文化省による「Ville d'Art et d'Histoire(芸術と歴史の町)」認定を受けており、また、2007年6月末には1800ヘクタールにおよぶ広範囲がユネスコ世界遺産リストに登録されています。市内中心をゆったりと弓状に流れるガロンヌ河の姿から、「Port de la Lune(月の港)」と呼ばれるボルドーの町。市内中心部と郊外6地点(2013年現在)を結ぶトラムウェイの開通にともない、都市デザインが見直され、中心部はほぼバリアフリー。歩行者に優しい町並みが広がります。
 

写真1:ボルドー市内中心部、Grand Théâtre(大劇場)とトラムウェイ
 
 河とともに、港とともに発展してきたボルドー。ガリアローマの時代には「ビュルディガラ」と呼ばれ、古くは錫(スズ)の取引、18・19世紀には、ヨーロッパ大陸、カリブ海地域、そしてアフリカ大陸を結ぶ植民地貿易の主要港として隆盛を極めます。
 ガロンヌ河埠頭には遊歩道が整備され、偶数年6月末には「Bordeaux Fête Le Vin(ボルドーワイン祭り)」が、そして、革命記念日には花火大会が開催されています。Place de la Bourse(旧証券取引所広場)前に設置された「Miroir d'eau(水の鏡)」には、18世紀ボルドーの栄華を象徴する石造建築が実に優美に写し出されます。ライトアップされた夜景を眺めながらの埠頭散策を是非ともお楽しみください。
 観光シーズン到来とともに、世界各国の豪華客船を色とりどりの花々が咲き乱れる埠頭にお迎えします。このような船舶運航状況もふまえ、2013年春には、昇開式のシャバン=デルマス橋が開通予定です。(写真2)
 

写真2
 
 現在の町並み形成は主に18世紀の都市改革により、それ以前のボルドー城郭都市の面影も一部、町の景観に残されています。サンピエール地区、サンテロワ地区、サンミッシェル地区…それぞれ城郭が拡張されるとともに発展し、独自の歴史・文化を築いてきました。郭外の市内北部シャルトロン地区では、17世紀以降、フランドル、イングランド、アイルランドといった国々出身の商人が活躍し、特有の外国文化が花開きます。この地域には、樽詰ワインの育成・出荷が行われていた18世紀当時の様子を伝える建物が多く残されており、現在も数多くのネゴシアン(ワイン商)が事務所を構えています。
 

写真3:サンピエール地区のPlace du Parlement(パルルマン広場)
 
 段階的に進められてきた、歴史保存地区の住環境・景観整備事業。ボルドーを久しぶりに訪れた人々は、美しく変貌を遂げた景観に「Métamorphose !」と目を輝かせます。郭内地区に点在する教会・広場周辺には、数多くのショップやレストランが集まり、晴れの日にはテラス席が大人気です。シャルトロン地区にのびるノートルダム通りには骨董品店が軒を連ね、今では庶民的雰囲気を残しつつ、センスの良い店構えのお店が集まる界隈です。

 ボルドーという名前を耳にすると、ブドウ畑に囲まれた「村」がイメージされることもまだ珍しくないようで、「想像以上に大きな町ですね」と驚かれることがあります。一部の近郊畑を除き、ボルドー市内から車で1時間ほど走ると、見渡す限りの広大なブドウ畑が広がります。
 

写真4:初夏のシャトー・ラフィット・ロートシルト(メドック、ポイヤック)
 
 世界のワイン愛好家憧れの有名シャトーを目指し、北西下流方向へ帯状にのびるメドック生産地区まで足を伸ばす。東へ向かえばサンテミリオン・ポムロール・フロンサック。教会都市サンテミリオンの風景を堪能しながら、地元のワインに舌鼓を打つ。世界的にもワインツーリズムの成長は著しく、ここボルドーにおいても、観光資源としてワイン文化をPRしていく新事業が、数多くのワイナリーで精力的に進められています。

 2016年にはボルドー市内北埠頭に複合ワイン施設「La Cité des Civilisations des Vins」がオープン予定。子供から大人まで楽しめる、ワインに関する趣向を凝らした展示・イベントが催され、ボルドーワイン観光の拠点としての役割も担います。
 

写真5:サンテミリオンの景色
 
 ボルドー市内から海までは最短50km。大西洋を流れる湾流はこの地方に温暖な天候をもたらし、訪れる人々を「Douceur de vivre」、つまり柔和な光と優しい空気で包み込んでくれます。豊かな自然環境を享受しながら形成された、にぎわいの中にも気品と落ち着きある景観。心ゆったりとボルドーでのご滞在をお楽しみください。
 私自身は2010年にアキテーヌ地方通訳ガイド試験に合格し、大先輩のMayumi Admondさんと共に、ライセンスガイドとしてご案内を担当させていただいています。
 

土岐 典子



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