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■シリーズ <ヴォー・ル・ヴィコント城>(2)
ベルサイユ王が驚いたヴォーの庭園風景




  ヴォー・ル・ヴィコント城のテラスから臨む庭園は<フランス式>と言われる最初の庭園であるだけに画期的なものです(写真2月18日)。お城の正面玄関から入り真っ直ぐに通り抜けると見えてくる絨毯を拡げたような風景にルイ14世はその眼を奪われたはずです。お城の中心から真っ直ぐと伸びるプロムナードの道は丘を越えてどこまでも続いているような錯覚を与えます。直線が作るシンメットリーの冷たい風景には噴水や球体、円錐形に剪定されたイチイの木が潤いを提供しています。また、庭園の突き当たりまで散策すると左手に舟遊びの長い運河が隠されているのも嬉しい驚きです。刺繍のような花壇はフランス式庭園が得意にするマメツゲを使用しています。庭師のデザインにもとずいて見事に剪定されたマメツゲの間には赤い土や黒い土が見られます。城主の話しですとこれは湿気を保存するためレンガや木炭を粉にしたものだそうです。しかも、赤や黒は緑の庭園を鮮やかに映えさせる色彩効果も持っています。
  イタリアから学びながらフランス風に庭園を造り上げたのはアンドレ・ル・ノートルAndre Le Notre(1613-1700) 。造園家ル・ノートルによってフランスのお城は一層その美と威厳を高めることができたのでした。
  1661年真夏、ヴォー城の宴に招待されたルイ14世は今まで視たこともなかった庭園風景に眼を奪われ、言葉も出ないほど心に激しい嫉妬を覚えたはずです。
  その証拠にル・ノートルはやがてベルサイユ宮殿を映えさせる壮大な庭園の造築に駆り出されていき、一方、城主フーケ財務長官はやがて国家財産横領罪で逮捕されていくのですから。


浜田 達郎
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