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■サント・ジュヌビエーブの丘のパンテオン





最近パリ散策の旅に人気がある。

シテ島にバスが停車できなくなったので歩きが多くなりつつある。そんな折、カルチェーラタンの散策ツアーでグループを初めてパンテオンに案内した。

パンテオンとはすべての神のいる所という意味があり、フランス大革命でキリスト教を否定して新時代を築こうとしたころ、祖国フランスを高め貢献した偉人たちを神のように例えて彼らのお墓を安置しているところである。

お墓は地下礼拝堂のようなところにあり、霊廟入り口の左右に啓蒙思想家の巨匠ボルテールとルソーが永眠している。お墓参りの前に私たちの眼を奪うのは、一階の壁一面をおおう大壁画の群れである。それらの中でも特にシャバンヌの壁画が名高い。

今から100年ほど前にパリを訪れた島崎藤村は「エトランゼ」のなかで次のように書いている。「巨大な石造りの堂宇の中央にある円天井からは午後の日が強く奥の方の壁の上に射していた。私たちが回廊ずたいにその明るい壁の側へ出た時は、そこで見るシャバンヌの絵が鮮やかな色に光っていた。

淡い黄いばんだ月に向かって立っている晩年の尼さんの壁画の前でしばらく私は旅の身を忘れていた。」

パンテオンはソルボンヌ大学の近く、サント ジュヌビエーブの丘に孤高としてそびえている。藤村が言っている「晩年の尼さん」とは5世紀にフン族の侵入からパリを守った聖女ジュヌビエーブことである。くだんの壁画は入り口から一番奥にある。ガイドした日は日曜日の午後、好天の日。壁画の前で藤村の文章を呼んで聞かせた。お客さんたちはしばし100年前にタイムスリップして旅の身を忘れているようだった。
(浜田達郎)



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