
長い行列

大睡蓮への通路

モネの世界

オランジュリー下階

発見された都市壁
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コンコルド広場に面したチュイルリー公園のテラスにあるオランジュリ美術館が大改造され、6年ぶりに訪問できるようになりました。新オランジュリーの個人用開館時間は何と真昼の12時半!、その代わり閉館は遅く夕刻19時(金曜は21時)と、美術館の伝統的タイムテーブルを変える斬新さです。7月の真昼の陽射しを浴びて開館を待つ人たちの長蛇の列を最初の写真にご覧下さい。こんなに多くの世界の人たちが首を長くしてオランジュリーの扉が開くのを待っていたのです。ところで写真に見る左手の白い看板は入場チケットを買う人の列、右手はすでに美術館パスを持っている人のためのものです。
新オランジュリーの最大の斬新性は6年前とは逆にモネの大作<Les Nympheas睡蓮>を上階にJean Walter・Paul Guillaumeコレクションを下階にしたことです(写真)。訪問客の最大の目的であるモネの<大睡蓮>への通路は橋のような造りになっており階段もなくアクセスがし易くなっています。それはモネが暮らしたジベルニーの村の日本式庭園の橋を連想させます。
橋を渡り、いよいよ<大睡蓮>のある大きなサロンに入りますと、水の世界が色彩も鮮やかに拡がっています。自然光はふるいにかけられて浄化されたようで、光は満遍なく大作を照らしサロン全体をやさしく包み込んでいます。訪問客たちはモネの世界に直ちに吸い込まれ、思わず手を取り合って散策したくなるような気分にさせられるようです(写真)。
階下に下りましても、ご覧のように(写真)地下室とはいえ自然光にあふれています。美術館の外側敷地の地下にWalter・Guillaumeコレクションのギャルリーを特別増設したのも新オランジュリーの特徴です。写真に見られるギャルリーは二つ並び,ここではハイクラスのバラエティーに富んだコレクションが鑑賞者たちの眼を驚嘆させています。印象派、後期印象派、素朴派、フォービスム、キュービスムなど、現代巨匠たちの傑作が圧倒的に並び、鑑賞者はコレクターの慧眼に驚異してしまうでしょう。
新オランジュリーの開館が遅れ、6年も待たされたのは地下コレクションギャラリーを造る時にパリの都市壁(写真)が発見されたからです。この都市壁は16世紀の半ば王妃カトリーヌ・ドゥ・メディシスが造ったチュイルリー宮殿をプロテスタントの急襲から守るためのものでした。このパリの歴史を証明する貴重なものが発見され、文化省は遺跡を巡って討論思案を重ねました。そしてこの<黄色いお堀>と呼ばれる遺跡を公開することにしたのです。素晴らしい絵画の数々を鑑賞した後、訪問客は都市壁なるものを見学できるわけで、これもまた新オランジュリーの魅力になりそうです。新オランジュリー美術館で絵画の鑑賞に加えた遺跡の見学を真に充実させるにはフランスの歴史と芸術を知る資格ガイド通訳が必要になってくるでしょう。
(協会編集部)
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