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■対談者

世界文化社:工藤 毅志国際本部長兼編集長(右)
エコーサービス社:遠藤 修司社長(左)

■場所

エコーサービス社〈サントノレ広場〉



■これからの旅 その1

(司会)
  最近は、今までの団体・格安・駆け足といった定型旅行に対し、個人・余裕・ゆっくりといった本来の個性旅行への要求が強まってきておりますが、本日は、家庭画報インターナショナル(国際版)創刊記念PR、パリコレに出席のため、現在パリご滞在中の世界文化社・工藤編集長と、パリのエコーサービス社・遠藤社長に、“旅”を求める異業種の側と提供する仏旅行社の側を代表して、これからの旅の行く末を自由に語っていただこうと思いますのでよろしくお願いいたします。

―旅は文化の運び手―

(遠藤)
  旅行業にしても、ファッション業界にしても、基本的にこれからの日本の方々にはいろいろな意味で、ヨーロッパと日本には気候風土からくる違いがあるんだと言う事をを認識してもらえたら良いなと思います。
  そう言う意味でも若い時代から海外に旅行し、いろいろなものを見て、いろんな考え方の人達が居るんだと言う事を認識して欲しい、別に感化されたり、影響を受けると言う事ではなく、違いがあるんだなということを認識してもらいたいなと言うのが僕の考えです。
  たとえば具体的な例を言いますと、ここって石の文化ですよね。パリの下なんて100mも岩盤なんですよ、場所にもよりますがね。今でも280キロ近い石切り場ってあるんですよ、この下掘ればいくらだって石が出る、そこに石の建物を作るわけですよね、地下も地上も石灰岩、今でもパリの建物7割が石なんですよ。鉄筋コンクリートが30パーセントしかないということは、20世紀になって作った建物が30パーセントであとは19世紀、あるいはそれ以前の建物がいっぱいあリ、それが全部残っていますよ。なぜかと言えば僕は天変地変がないからだと思います。
  地震がない、日本のように定期的に来る台風もない、大雨もめったにない、だって年間の雨量は550ミリしかないんですよ、550ミリと言ったら日本の1/3から1/5ですよ、と言う事は床上浸水もなければ洪水もめったに起きない、地滑りがない、地震がないから津波もない、それに噴火山がない。フランスで一番最近の噴火は7000年前なんですよ。
  フランスの場合戦争というとね、負けそうになると無条件降伏してしまう。いつも勝ち組みに入っていると言う要領のいい国ですから、物が壊されない、町が壊されない、パリだって第一次、第二次世界大戦の爆撃から全部逃れている、だからこういった文化遺産が全部残る。
  そう言った所で生まれ育った人達って言うのはやはり非常にのんびりしています。そしてヨーロッパの場合全部城壁都市の中に町を作っているから、総芸術都市を作る発想が生まれてくる。だから物の見方がワイドになってくる。日本の場合は城壁のリミットがない、城壁はお城だけですから、城下町にはリミットがない、だから一つの立派な建物を作るんだけどリミットのない町並みになってくるから、ぐ−っと広がって行くわけですね。
  ヨーロッパでは絶えず城壁都市の中に育っていったから全体を見るという目が生まれてきた、こういう中に歴史の違い、風土の違いがありますね。ただ日本には日本の気候風土に合った生活様式があって、ヨーロッパにはヨーロッパの気候風土によって出来た人間性がある、それが最初に僕が言った、お互いに根本こんなに違いがあるんだなということを認識してもらいたいと言う事ですよね。だってお互いこんなに違うんですから、だからこれを旅行者の人達にも期待するというより、ある程度啓蒙すると言うか伝えていきたい、判るわからないは相手の勝手ですけれど、そのようにしていきたいなと考えていますね。
  まあそれがファッション業界にも通じるかもしれない。たとえば、フェア−というかコンテストの招待が良く来るんですが、日本の方達は細かいところをすごく注意しますね。だけど全体のシルエットがちょっと崩れてしまう。こっちの人達は細かい事は気にしないけれど出来あがってみると全体のシルエットがきちんとなっている。これはやはり感覚の違いですよね。感性の違い、その違いは何処から来るかと言うと、やはり気候風土、文化、歴史、そういうものから来るんじゃないかなというのが基本的な考え方ですね。
  だからこれからの旅行形態がどう言う風になって行くのかというと、もっともっとどんどん(海外に)出て来て欲しい、お一人でも良い、団体でも良い、なんでも良いから海外旅行をして欲しいなということ、世界は広くていろんな国があって、いろんな考え方の人達が居るんだ、と馬鹿にしたり上に見たり下に見たりするのではなく、みんな平等で、しかも違いがあるということを認識して欲しいなと考えていますね。

―文化の双方向性、日本からも文化の発信を―

(工藤)
  今おっしゃった事って言うのは雑誌作りだって全く同じことなんですね。要するに今回この家庭画報インターナショナルを出したのも、今や外国に行っている日本人は急速に増えているわけですから、違いと言う意味においては大分解ってきましたよね。むしろ逆に海外の人が日本にもっと来て本当の日本を知ってもらいたいと言うことなんです。PRが下手だから日本って。
  たとえばフランスはフランスというものをPRする事にかけては世界一ですよ、政府そのものが。たとえば東京だと、仏政府観光局があってやってるわけだけれど、日本はまだ日本を伝えきれていない部分があるんですね。フランス人は文化を持っている事に対しては大変リスペクトする国民であって、そこがアメリカ人などとちょっと違って、他の国へ自国の文化を持ち込んで、誇れる商品を売っていくというビジネスをしている訳で、日本は文化のある国ですから受け入れ易いんですね。こうしたことを考えても、日本文化を海外に伝えていくということと同時に、それぞれの文化をお互いにリスペクトし合えるようにという観点でインターナショナル雑誌をこれから作っていかなくちゃいけないと言う事から、この雑誌が始まったわけです。 だから旅行もそうであって、当然の事ながら現地に行けば建物は違う、食べてるものが違う、顔も違う、だから違いそのものって言うのは感じるんだけれど、その違いに対してのあるいは違いがあるからこそ、逆に人間って最終的には同じ、ベースは同じ、だからたとえば互いに旅行に行っても、違う風習の中に入って行ってそれを楽しむと言う事になれば、どっちが上でどっちが下って事ではなくて、それぞれの文化の中でお互いに同じ価値観で、同じレベルで、同じ事を楽しめる。だからこの会社でやられる事は、大手の旅行社はかなりビッグなツアーを作ってどーんと送りこんでくるのと違って、フランスに長い事いらして、フランスの良いところも悪いところも含めて全部熟知されてる中で、こちらに来るお客さんに対して、何処で、何をしたいか彼らが望んでるものをセットし、プレゼンテーションし、きめの細かい事をなされるんじゃないかと思うんですね。
  また、せっかくフランスにこのオフィスがおありになると言う事は、そう思っているフランス人を逆に日本に来てもらうようにと言うようなこと、他の旅行業者ではなかなか出来ないんではないかと思うんですよ。

―文化あるところ、人は集まる―

(遠藤)
  それと今お話の途中で僕が言おうとしたんですが、フランス政府の観光局のお話がありましたね。フランスの場合はですね、ここの国は観光に力を入れていないんですよ。
  パリを見てもバスは締め出し、パリの場合一日平均1200台位の観光バスが入ってくる、これは世界一ですね。でもパリ市内にバスの止められない場所をどんどん作っています。もう観光客いらないって言う態度なんですよ。
  なぜなのか、それでも来るんですよ観光客は。“ルイヴィトン”と同じです。それでは何に力を入れているかと言うとさっきも言った様に文化なんですよ。文化のあるところには人が集まるんですよ、だから観光には力を入れない。だから日本も日本独自の文化に力を入れて欲しいんですよ。そうするとそこには必然的に人が集まってくるんですよ。

(工藤)
  全くそう、全くそうですね。僕はその観光に力を入れているというのではなくて、フランス政府観光局と言うのは、今観光局と言わないじゃないですか、メゾン・ド・フランスと言うじゃないですか、観光局のようなんですけど実際はフランスの文化をあそこで発信しているんですね。
  僕もそれを言おうとしていて、フランス大使館もフランスの企業とか、あるいはフランスの持っているバックボーンの事については、(しっかりサポートしていて)フランス企業のために大使館がレセプションを開くんですね、それで大使が出て演説するんですよ。必ずそこにはフランスの企業のバックボーンについての話があるんです。歴史的な話とか、文化的な話を。
  普通日本では大使館あたりでトヨタとかシャープの発表会があったとして、大使自ら出て来て日本の企業についてのバックボーンの話をするなんてありえないじゃないですか、だからすべてに渡ってフランスって言うのは、もちろん観光もそうなんだけれども、文化活動をしている。
  フランス政府やメゾン・ド・フランスは勿論ですが、フランス商工会議所、あそこは商工会議所の中で一番良くやっておられると思います。
  ルイ・ヴィトンやシャネル、カルティエなどという大きな企業、ソシエテ・ジェネラルなどの大きな金融業が団体になって、ビジネスばかりではなくて、文化的な活動をすごくやっている。

―EUは文化で国を統一―



(遠藤)
  だからね、こう言う事なんですよ。この基本って言うのは、ちょっと今の延長線上にはなりますが、はっきり言って18世紀に決まってるんですよ。あるいは17世紀とかにね。
  なぜかと言うとヴェルサイユ宮殿を造るルイ14世が、当時の文化の中心はイタリアだったんですよ、それでべルニ−二っていう建築家を呼んだんですよ、ルーブル宮殿の正面入口を設計させるために。呼んで設計させ模型まで作らせて、気に入らず帰しちゃった。これがヨーロッパ文化の大きな転機だったんですよ。
  いわゆるベルニーと言うヨーロッパ最高の建築家ですよ、イタリア人はわざわざ出かけて行かないんですよ、それがフランスの王様の招聘で来てくれた、来てくれただけでもうれしい事なのに、設計が気に入らずにルイ14世が帰しちゃったんです、それでお金を湯水のごとく使ってフランス国内の芸術家を養成したんですよ。それでヴェルサイユ宮殿作ったんですね。それが17世紀が終わり、18世紀が終わり、19世紀に開花して行ったんですね。200年かかったんですね。そういう大きな転機があったんですよ。
  それと同時にルイ14世の政策というのは、国の国境っていうのは山と川と海によって形成され、北はライン川、東はアルプス、南はピレネー山脈、そして地中海、これの中は全部フランスなんですからね、それでどんどん戦争を仕掛けていったんですね。それでヴェルサイユ宮殿を造ったでしょう、お金を湯水のごとく使ったわけですよ。それで次の王様ルイ15世の時にはもうぜんぜんお金がなくなっちゃった、それで非常にシンプルになるんですよ。
  それが今ルイ15世風といって、それからロココ風になっていくんですよね.、それでルイ15世は全然やる気がない王様、それでせっかく作ったルイジアナだかカナダだか、せっかく作った植民地を取られちゃうんですよ、イギリスにね。それで当時のフランス政府の政策が変わってそれが今だに続いてるんですよ、それが文化なんですよ。
  いわゆる、ヨーロッパを軍事的に攻略するって言うか占領するんじゃなくって、ヨーロッパを文化によって統一しようという、これがルイ15世の時に決まったんですね。それが今のEUにつながっている。だからフランスの場合はEUを経済的、お金と物と何とかとといって統一しようとしているけれど、最終的には文化によってヨーロッパを統一しようとしてるんですよね。
  だから右の人も左の人も、どの人達もすべてここの国の中心は文化なんですよ。カルチャーって言いますでしょ、それでフランスという国は農業国なんですよ、大農業国、自給率98パーセントなんですよ、それでアグリカルチャーって言うでしょ、アグリは土でしょ、だから土地の豊かなところ、農業豊かなところに文化が花開くと言う、それが基本的な考え方、だから農業政策に力を入れる、そういった所から文化が花開くそしてそれがどんどんヨーロッパに浸透していく、それで統一するというそれがここの国の最終的な目標なんですね。
  EU統合を文化によって統一しようとしている。だからそういった所には人が集まってくる。去年みたいな時でも、フランスへ7600万人来たんですよ、パリでも3000万人集まって来た、そのうちのほとんどがヨーロッパ人なんですよ、89パーセントの人がヨーロッパ人だったんですね。だからヨーロッパ人以外の人は11パーセントだったという事ですね。
  今年もイラク戦争とかあるにもかかわらず延びてるんですって、この間発表がありましたけどね、プラス5パーセントくらいのびているとか。ただ僕は現地に居て、旅行業界でホテルといろいろ言い合ったりですとか、バスの運転手といろいろありますが、僕に言わせると、フランスはフランス人がいなかったらすごく良い国だなぁと言う感じがします。(笑)

(工藤)
  文化はその土地に根づいているからなんですね。モードの世界はフランス人のデザイナーと言うのがずいぶん少なくなって外国人のデザイナーになっている。それはどうしてかと言うと、僕はここが面白いと思うのは、さっきからおっしゃっていた文化と言うベースがあるからフランス人は何をさておいても自分達に文化があるから、たとえば他の人がそこでデザインをしてもフランスのオートクチュールであり、プレタポルテであり、パリで行われるファッションの一番新しくて文化的なところを提供し、そこにメゾンを残していく。自分のブランドを売ってでもね。
  シャネルは売ってないけれど、たとえばルイ・ヴィトングループに吸収されたり、ジャン・ルイ・シェレルも自分が生きてるのに売っちゃった、ジバンシーも自分のメゾンを売っちゃった、日本で言えばケンゾーもルイヴィトングループに売ってしまったり、だけれどもそのメゾンを大事にしていて、新しく来るのはフランス人のデザイナーも居るけれど外国人デザイナー。そういう面白いところは築き上げてきた文化だと思う。

(遠藤)
  芸術家だってそうですよね、シャガールとか、ピカソにしたって、モジリアニにしたってね、みんなそうですよね。〈その1完)



■これからの旅 その2

“旅は、感動、経験、触れ合いにより、相手を知り、尊重し会える。”

―モノ・カネより感動・経験による豊かさを求める時代になった―

(工藤)
  ショパンにしたってフランス人ではないけどフランスで活躍していたわけだし、そう言う意味からすると非常にフランスというのは良いところにありますよね、ヨーロッパの中心にあるという、やはり太陽の国なんですよね。ルイ14世太陽王がいたくらい。それはやはりみんなが、特に日本人がその魅力をものすごく感じると思うんですよ。
  ただ国民性ですごく難しいところがあったり、議論し出すともうキリがないというところがあるから、時々うんざりする時がある。おっしゃったようにフランスでフランス人が居なかったらもっとスムーズにいくんじゃぁないかっていうことは確かにあると思いますよね。(笑い)
  やはり社長がここにオフィスを構えてらして、旅行業という仕事をやってらっしゃるんだけれども、基本的にはパリの中でインフォーメーションセンターを作ってるわけですから、日本から異文化に触れたい人達が来る、今まで日本でやっている旅行業ではない、いわゆるさっき言ったいろんなモチベーションがある、それに対して提供できるようなものが当然おありになって、それが一番の宝だと思うんです。
  フランスではすでにブームを通り越していますけど、日本を筆頭にリスペクト・アジアと言うか、リスペクト・カルチャーというアジアンカルチャーと言うものがだいぶ定着していて、僕は逆に社長のところの果たす役割が別な意味でこれから大きくなってくるんじゃないかと言う期待があるわけですね。
  こういった雑誌を出すと、さっきの続きですけど、今まで日本がお金とか海外のものを買うというすべて経済とお金に結びついている事しかPRが出来なかった、あるいはハイテクノロジーとか車とかしかPR出来なかったのがやっとこの時期になって、文化と言うものがいかに大切かというのがわかり始めてね、でも政府はまだ何にもやってくれていない。そうするとやはり文化を運んで行くものは、単に旅行として人を運ぶばかりじゃなくて、文化を運んでいただくような、ビジネス的にこれからそれをどうしていくかという問題もありますけれど、社長のところじゃないとなかなか出来にくいような物もあるんではないかと思うんですよね。
  それはいろんなメディアとの交流とか、メディアはネットの時代となって来ているので、ネットを含めて当然紙媒体と一緒に各メディアのうまい利用の仕方を含めて、お互いにその相乗効果も手伝って、何か新しいトランスポーテーションとサービスのアイデアを考えられれば良いんではないかなと僕は思っているんですね。
  それから、僕なんかもその年齢ですけれども、もうすでにいろんな生活をしちゃってて、これから何をしようかといった時にね、もう物はいらないという時代になるわけですよ、そうすると何か自分が感動できるもの、自分が経験できるもの、自分が何か触れ合う事が出来るもの、自然であれ、人であれ、そういうものを求めてくる時代になるじゃないですか、ず−っと日本の中で生きてきたライフスタイルをどっかで自分なりの考え方でぽっと短期間で良いから旅行という形態、あるいはどっかに1ヶ月でも2ヶ月でも住んでみよう、そこでコミュニケーションをはかりたいという形態、まあいろいろあると思うんですよね。

―文化をブロックに分けて、テーマ性のある参加しやすい旅行企画―

  そこで一番問題になるのが言葉の問題じゃないですか、だから言葉の問題さえ解決できれば、と思っている人がたくさん居るんですね、年を取ってきてから語学を習い始めても、覚えが悪くて遅々として進まないけれどもそれでも何か自分がやって見たくて、ちょっとでも良いからコミュニケーションをはかりたいという人達が増えているので、かなり中高年の語学教室って流行ってるわけですよ。
  だからたとえばそういうものの延長線上がそこに住むとか、テーマ性のある物をまず発掘していただいて、テーマ性のあるいくつかの文化のカテゴリーを作って頂いて、それに参加できるようなプランニングっていうのもこれきっと面白いかもしれない。
  体験できるっていうのがあるし。今日本で地方に行って体験して来ると言う旅が出来てるんですよね。年配の人達って器を作るのが好きだから、何か物を作れるようなのは結構いけるんじゃないかと思うんですよ。
  今まで社長がご経験になってきた事をいくつか分けていただくと、他の旅行業者には絶対真似できない文化と文化を運ぶというような、文化をキーワードにした、エコーサービスの文化ですということを発信なさるとメディアも飛びつくと思います。
  テレビも含めてそういうチャンネルをきちんと作っておくと良いんじゃないかと思うんですよ。今日本で流行っているTV番組は[世界ウルルン滞在記]ですから。行くのはみんな若い子達なんですよ、いろんな国に行ってそこの生活の中に一週間飛び込んで生活させるわけですよ、もうアフリカの奥地へ行ったりとか、今の日本の若い子ってもう何にもやった事がないわけですよ、行くと大変な事をやるわけじゃないですか、フランスでもレストランに行ってお菓子作ったり、イタリアでもピザ屋でピザを作ったりして一週間、それを放映するわけです。最後はぼろぼろ涙涙で日本的なんだけどこれが大あたりでロングランの長寿番組なんですよ、と言う事はベースはそこなんじゃないかってすごく思うのね、違うけれど経験すると人間って一緒じゃないですか、そこに人間のインターナショナルな部分、文化の違いはあるけれど何処も同じだって言うことですよね。中高年もそれやりたいんですよ。
  テレビは若い子ばっかり行ってるから、若い俳優なんかが涙流しながら行ってるんですからそれを見るから面白い、でも現実的にみんなそれがやりたいんです。これは社長とかが出来るんじゃないかと思うんですけど。何かを一つ1ヶ月で体験するような、イタリアでアグリツーリスモっていって農家にいって体験させるのが流行ったんですよ。それをイタリ−で企画した人が居たんですよ。

(工藤)
  ところでちょっとフランス人気質について言うと、これからセリーヌのコレクションへ行くんですが、パリコレなんか時間通りに始まったことがない、遅れるのが普通です。フランス人は自説を曲げない。コレクションのとき、毎回、同じトラブルがいつも起きる。要するに、同じシートで二重の招待が原因でシートの取り合いとなる。日本人は、あたまいいからしっかりリストでチェックするが、フランス人はやっていないみたい。

(遠藤)
  TGV(フランス新幹線)の中でも、ダブルブッキングが起きたんですよ。身障者20人と日本の若い女性がかち合い、後から来た身障者を座らせたが、車掌を呼んで文句をいっている間に目的地のツールについてしまった。時速300キロメートルで56分しかかからないから。

(工藤)
  それでもフランス人は“すいません”といわない。自分のせいでない、やった人が悪い。“セ パ マ フォト”(自分の過失じゃない。)というだけで頭にきますよね。日本人はうるさいんですよね。“イージャンか”とは言えないんですね。文化の違い、生活の違いかも。

(遠藤)
  それを気にしていると、自分がストレスになってしまう。だから、気にするなといってるんですよ。そうしないと自分の体に悪い。結局、ケセラセラの世界になってしまう。この前、スペインの時なんか、8時間遅れ、最終駅に着くと駅員がサンドイッチとジュースを用意して待っていてくれたのを見て、多くのフランス人は“ブラボー”と言ってそれでおしまい。〈笑い〉

―その違いを認識し許容すれば、世界に平和が―

(工藤)
  時々相手からやり込められそうになると、カーッとなって戦いになるから、イラクの問題じゃないけれども文化どころじゃなく難しい問題になってきますけれども、それぞれの文化に対してのもう少し許容範囲があれば、政治の世界は違うでしょうけれども、許容範囲が広ければと思いますね。まあアラブは非常に厳しい掟を持ちすべてがアラーの神の思し召しの宗教だから、とても大変でしょうけれど、それも許容していかないとこれから世界は大変な事になってしまいますよ。
  みんなリスペクトしようと片一方で言っていながら、イラクの問題なんて言うのは結局文化をお互いに認め合おうとしない意地っ張りの話だと思いますよ。独裁者はいけないけれどでも少なくともそれに対して相手の文化をアメリカナイズさせようというのではなくて、許容しないと21世紀と言うのはダメと僕は思うけれど。たまたまフランスと日本ということになると、いろんな問題はあるにしても文化的な面でのお互いのリスペクトがあるからそう言う意味では良いかなと思います。

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〈対談を終えて〉話は、はじめから格調高く、旅と文化論へと発展していった。
文化あるところ、人は集まる。
旅は文化の運び手。
その違いを認識し許容すれば、世界に平和が実現する。
文化の双方向性、日本からも文化の発信を。
EUは文化で国を統一。
モノ・カネより感動・経験による豊かさを求める時代になった。
文化をブロックに分けて、テーマ性のある参加しやすい旅行企画を。
こんな話を伺いながら、忘れかけていた、本来の旅行の原点に辿りついたような気がした。
工藤編集長には、年度内にもう一度、このHPにご登場いただく予定です。お楽しみに。


本編は http://perso.wanadoo.fr/echoservices より抜粋したものです。




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